雑草の言葉

ジャスト イン タイム方式

2007/01/27
社会・経済 6
今や世界のGMを抜く勢いの自動車会社、トヨタの『ジャスト イン タイム システム』 は下請け会社や孫受け会社泣かせの、親会社にとっては大変都合のいいシステムだ。昔は『カンバン方式』と言ったこのシステムは、部品の在庫を自社に置かなくて済む。下請け会社に、その部品を生産ラインに流して組み立てる直前の時間帯に部品を納入させる。下請け会社は納入時刻に遅れる訳にはいかないから工場付近で交通渋滞を引き起こす事は有名だ(ちゃんとアイドリングストップするようにトヨタで指導しているのだろうか?)。このシステムは、車から直接ラインに部品を運ぶから確かに能率的だ。効率のいいシステムである。親会社にしてみれば、在庫を抱えなくても品不足にならないと言う願ったりかなったりのシステムだろうけれど、下請け会社や孫受け会社にとっては大きなストレスだろう。
 多くの会社がこのシステムを見習っている。・・・コンビニさえ見習っている。つまり、コンピューターで不足になってきた商品を配送会社に知らせ、決まった時間に商品を補給している。・・だからコンビニには倉庫がないのに品が揃っている。
 このシステムを見習ったかどうかは分からないけれど、『商品』を『人』に置き換えたら人材派遣になる。会社にしてみれば好景気のときだけ派遣を沢山頼み、不景気になれば、派遣を切ればいいから好都合だ。しかし、派遣労働者の身からすればたまったものではない。会社の都合のいいように使われて、いらなくなったら使い捨て・・・ 
 会社の方でも言い分はある。いつ辞めるか分からない、会社に忠誠を尽くさない人に将来までの保証はする必要がない。・・・一理あるだろう。・・でも、現代の日本に於いて会社に忠誠を尽くす人間なんて元々あんまりいないのではないだろうか?正社員だから会社に忠誠を尽くすとも思えない・・・実際会社の役職に就いている知人も言っているけれど、会社ではずっと正社員にするつもりはないとの事だ。世界中を相手に生き残りをかけている今、派遣社員には申し訳ないが、そんな余裕はないとの事だ・・・同じ仕事をして、給料も低いし、健康保険や年金も会社では払ってくれない・・ワーキング・プア[仕事を持っているのに貧しい人々]もここから沢山生まれている。こんな矛盾が許されていい筈がない・・。
 市民運動、労働者運動によって長い時間をかけて改善されてきた労働者の権利が逆戻りしたかっこうだ。一部の労働者だけ差別的に昔の、労働者は機械の歯車と同じ扱いだった頃に一気に後退・・。だから、現在こういう人たちの権利、生活向上に向かって法改正の動きが起こっている  
『会社の存続、成長が第一』という、人間より会社を大切にすると言う主客転倒の詭弁がまかり通っている。経営陣は「会社が潰れたら、雇用も何もないのだから当然だろう」とくる。でも、逆に「人が安心出来ないのなら、会社なんか潰れても仕方ない」と言うべきだろう。

 ・・差し当たっては、労働者の権利をしっかり保証すべきである。しかし、これらの多くも対処療法のような気がする

・・・もっと別な切り口から考えてみよう・・・

 かつて国内で経済成長の限界を迎えた日本は、海外に経済成長の矛先を伸ばしてきた。労働者も東南アジア中国、南米などの労働力を安く使っていた。しかし、それらの途上国と言われている国々もかつての日本のように経済成長をはじめたものだから、また昔に戻って、国内の労働力を安く買い叩きはじめた形だ。これは、経済成長の限界を迎えての構造的なものであろう。もともと物質的にはゼロサムゲームに近いこの地球上で、経済成長は無理になってきたわけだ。それでも強欲な大企業の経営陣は無理に会社と自分達だけでも成長しようとして、結果として労働者に当然の権利として払うべきお金を「派遣」という名のもとに蚊帳の外に出して、搾取しはじめたと言っていいのではないか?そう、「派遣」の人々の給料が安いのは、間接的に、経営陣や株主に給料を「ピンハネ」されていると考えていいのではないだろうか?つまり、好景気だと実感している人たちが、派遣の人たちの受け取るべき給料を間接的に搾取しているという構図だ。
だから、庶民が感じていない「戦後最長の好景気」なんて事を、一部の大企業の経営者や投資家が言っていられるのではないだろうか?
 現在の行き詰まった経済成長を無理に押し進めようとすると、大局的に見て「格差」として現れるだけだと思うのだが・・これ以上経済成長を強行すると、次にどこから搾取するのだろうか?
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Comments 6

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さんぽ☆

へぇ~、トヨタとかコンビ二ってこんなシステムを導入していたのですねv-237
知らなかったです。

物づくりが主流のときは、使い捨ての人材でもやっていけたけど、これから教育や介護等の需要が高まってくる中では、会社も「人材が命」になっているのではないかって気がします。

2007/01/27 (Sat) 00:46

雑草Z

「人材が命」は日本の良き伝統だった筈ですが・・

 
 いくつかの職種では、さんぽさんのおっしゃるように人材重視の正規雇用が増えているかも知れませんが、工業などに於いて日本のアドバンテージがなくなりつつある現在、派遣社員やアルバイトは急増しています。
 最近会社は「人材が命」とよく言う割りには、派遣やアルバイトを増やして正社員を減らしていますね。

2007/01/27 (Sat) 01:45

omega

お久しぶりです
製造を派遣に切り替えたり、海外に移したりした結果、物が壊れやすくなったと感じています
省エネでも資源の無駄遣いの矛盾を感じます
壊れても、ゴミとしてだして、ゴミを増やすんでなく、修理して使用していきたいですね
昔のように長い間、同じ物を使いつづける精神を大事にしたいですね

2007/01/28 (Sun) 16:28

雑草Z

低コストで資源無駄遣いの問題

 お久しぶりのご訪問、歓迎いたします。
ここで論じている内容とは別ですが、
 最近の製造業は低コストで、いろんなものが一昔前と比べてはるかに安く手に入ります。しかし、omegaさまのご指摘の通り、物持ちもわるく、確かにすぐ壊れますね。修理して使う習慣、文化がなくなりかけているのは大問題です。海外での生産はこの原因かも知れませんが、派遣の問題とは別の経費削減が原因かと思います。
omegaさまのおっしゃるとおり、同じものを使い続ける精神は本当に大切にしたいものです。
 このことに関してもいつか記事を書きたいですね。

2007/01/28 (Sun) 19:08

omega

利己的な実業家や、官僚とか、
株だけで生活をしている人にどんどん利益とか給料を「ピンハネ」ですいとられ
政府は経済成長とかいってごまかし
実は経済成長すればするほど
大半の庶民はどんどんまずしくなって、いく。
利己的な一部のモラルのない勝者は庶民を搾取し、たるんでいるとかいってどんどん経済成長させ人間が生きていける環境を破壊させる気でしょうね。

2007/06/10 (Sun) 10:50

雑草Z

誰の為の経済成長??

 一昨年あたりの村上ファンド、ライブドア騒動などで、「会社は株主のもの」みたいな資本主義の先鋒アメリカ的な論理が合理的のような風潮が出来てきましたが、それは、「会社はお金を貸した銀行のもの」と同様の資本家中心の危険な考え方でしょう。

 庶民は、「経済成長は、社会の発展の為」という言葉に踊らされていますが、omega 様のご指摘どおり、実質は一部の資本家の為のものでしょう。株だけで生活するものが存在する社会はおかしいですね。この事に関してもいつかしっかり記事にしたいと思います。

 現在の自由主義社会は、
 自由主義=資本主義
的な部分が多く、資本家の為の社会になっています。共産主義を謳っている中国すら、実質資本主義です。
 モラルのない資本家に牛耳られている社会は、ある意味封建社会より悲惨かもしれません。


 omegaさま、お久しぶりです。このコメントは、この時点での最新記事、【モラルハザード】に戴いても、しっかり呼応する内容ですね!!いつも的確なコメント有難う御座います。同じ考え方の人が増えて欲しいものです。 

2007/06/10 (Sun) 14:33
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
無理に経済成長させようとするから無理に沢山働かなければなりません。あくせく働いて不要なものを生産して破局に向かっているのです。不要な経済や生産を縮小して、少ない労働時間で質素にゆったり暮らしましょうよ!「経済成長」はその定義からも明らかなように実態は「経済膨張」。20世紀に巨大化したカルト。
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